2010.04.14
Doces Cariocas Japan Tour 2010 / Tour Report (still in progress)
先日このブログでもお伝えしたとおり、それぞれソロ・アルバムを出しているミュージシャン夫婦で、
<ドーシス・カリオカス>名義でも共に作品を発表しているアレクシア・ボンテンポ&ピエール・アデルニが現在来日中。
まずは4/10(土)、カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュでの公演初日。
この日のライブは、ピエール・アデルニがソロで自作曲を披露する前半と、
アレクシア・ボンテンポが登場して、彼女のソロ・アルバム『アストロラビオ』のレパートリーを中心とした後半部との二部構成。
名前の通りフランス系のルーツを持つピエールの音楽には、ボサノヴァ・シンガーの多くが持つクルーナー感ともまた違う繊細さがある。典型的なパリの男性シンガー・ソングライターたち、例えばマチュー・ボガートあたりを思わせる歌い口は、実はありそうでない個性。でももちろんカリオカだけに、パリジャンたちのそれと比べれば、圧倒的にカラっとしている。色気はあるが、気難しさはない。センシティヴだけれど、内気というのではない。「ブラジルのジャック・ジョンソン」というキャッチ・コピーで知られるピエールだけど、たしかに陽性で、潮の香りがするフォーキーな魅力がある。
一方のアレクシア・ボンテンポも、アメリカ系とブラジル人のハーフで、7才までをワシントンDCに暮らし、その後もブラジルとアメリカを行き来する生活を経てきた。まだ20代前半の彼女が登場して歌い始めると、その場がグッと華やかになる。場内に満たされる「いい女」オーラ。ブラジルの、リオの、現代のイパネマに生きる娘の佇まいを、なめらかな美声が加速させる。彼女の歌声は女性的なふくよかさに溢れているけれど、余韻はとてもすっきりとして、ベタつくことがない。彼女が歌うどんな曲も、まるで彼女の私小説のように聴こえるのだが、それでいて聴き飽きることがないのはそのせいだ。ちなみにアレクシアの2ndアルバムとなる次作は、カエターノ・ヴェローゾの英語詞曲を取り上げる内容で、プロデュースにはアドリアーナ・カルカニョットの別名プロジェクト「アドリアーナ・パルチンピン」のプロデューサー、デー・パルメイラが担当することが決まっているというから、ブラジルでもさらに注目のシンガーになることは間違いないだろう。
こちらは日付変わって4/13、渋谷カフェ・アプレミディでのウェルカム・パーティー。
実は今回のツアーでは、日本酒や寿司好き二人の「オフ担当」として、ライブ後の打ち上げ、鎌倉観光&拙宅でのランチ・パーティー、そしてこの東京でのパーティーの幹事を仰せつかったのだが、ショウ本番はもちろん、こうしたパーソナルな場で聴く二人の音楽はまた格別な味わいがある。
ソファに寄り添い、マイクを通さずにつむがれる静かな音楽。集まった人々がそっと耳をそばだてるなか、音楽が生まれた瞬間のよろこびを多くの友人たちと共有できる、濃密で幸せな時間。二人が三曲ほど演奏してくれたこの後も、6月にアルバム発売が決まったサブリナ&アルトゥール、昨年のヘナート・モタ&パトリシア・ロバート来日時のパーティーにも参加してくれた日野良一くんにも歌ってもらったが、この二組の音楽にはピエールも驚きを隠せない様子。最後にヒロチカーノ氏の先導で「サンバ・サラヴァ」をみんなで歌ったり。ボサノヴァ好きなら誰もがタイムスリップして見てみたい、ナラ・レオンのアパートを思わせる光景だね、との声があちこちで上がっていた。ピエールにそのことを伝えると、本当にその通りだ、でも我が家もいつもこんな風だよ。いつでもたくさんの仲間たち、料理とお酒と音楽であふれてる、お前もウチに泊まりに来い、と。ピエールは共作の多いコンポーザーで、ホドリーゴ・マラニャォンやダヂをはじめ、セウ・ジョルジ、ドメニコ、ガブリエル・モウラらと曲を書いているのだけど、いつもこんな場が発端になっているのだろう。20代前半のときに立ち合わせたら、一発で音楽に対する価値観が、もっと言えば人生が大きく変わっただろう、そんなことを思わせる、静かでゆるぎない音楽と、賑やかなパーティーだった。
したたかに酔っ払っていたため記憶があやふやなのだが、この日来ていただいた中原仁さんも「こういう雰囲気をそのまま、一般のファンにも見せられる場があればいい」ということを言われていた。うん、本当にそういう場を作れれば最高だなと、このことは宿題としてまた考えてみることにしよう。
残り2公演、4/17(金)青山EATS and MEETS Cay、そして翌18(土)の山形・山寺 風雅の国 馳走舍(リンク先は公演主催の山形ブラジル音楽普及協会)は、どちらもインティメイトな雰囲気を味わえる素敵な空間です。(山形は桜も?)
間近で楽しめるこのチャンスにぜひ!
ツアー詳細はこちら(CD試聴のリンクもあります)
制作・企画:Rip Curl Recordings / インパートメント