ルイス・コール「アルバム 2」
Louis Cole "Album 2"
2013.05.08 on sale
発売日: CD - 8th May 2013
iTunes先行配信 - 1st May 2013
CD定価: ¥2,100+税
規格番号: NKCD-1007 (qb004)
発売元: NRT / quiet border
ライナーノーツ: 高橋健太郎 / 国分純平
※日本盤ボーナストラック2曲収録
※歌詞対訳付き
21世紀を浮遊するファルセット・ヴォイス。
ビート・ミュージックからクラシックまでが溶け合うゴーストリィなサウンドに、
ビーチ・ボーイズ直系のポップセンスを響かせる超新星。
「ブライアン・ウィルソンは目を細め、サンダーキャットは体のどこかがムズムズするだろう」
――国分純平
「虚ろでいながら、どこか生暖かい感触が耳を離れない。
堅実なソングクラフトは、ベックのような化け方をしても不思議ないと思わせる」
――高橋健太郎(ライナーノーツより)
M6「Like a match」
M2「Bellow the valleys」
M9「Clouds」
M4「It's so easy」
◆作品について
LA在住のシンガー、ドラマー/マルチ・プレイヤーにして、優れたビデオ・アーティストでもあるルイス・コールのソロ・プロジェクトによる最新作が、CDアルバムとして世界初登場。
作詞・作曲・アレンジ、ほぼ全ての演奏と録音までを自身で制作、その陰りある美しいファルセット・ヴォイスは、できそこないのSFと化したこの21世紀に、あらゆるジャンルを超えて響くアイコンとなるだろう。Brian Wilsonを思わせる第一級のポップセンスを兼ね備えた、James Blakeらにも比肩する現代的才能の登場である。
サウンドの新しさにも、トータルアーティストとしての底抜けの才が潜む。Brad Mehldau、Larry Goldingsら超一流ジャズメンと共演歴をもつドラマーとしての技量が、LAビート・ミュージックの息吹を刻みつける。クラシックや現代音楽の素養とエッセンスが、幾重にもダビングされたコーラスや弦楽器のハーモニーによって、不穏な現代を描く背景となる。南カルフォルニアの伝統を汲むソフトロック風の楽曲と、カシオのヴィンテージ・キーボードなどロウファイなサウンドの併用による音像も鮮烈。
YouTubeチャンネルを舞台とした作品発表で、既に世界中で熱烈なフォロワーを獲得してきたルイス・コールが、未発表トラック2 曲を追加して放つ初のCDアルバムにして最新作。
NRT の新シリーズ<quiet border>第4 弾リリース作品。
◆ライナーノーツその2(抜粋) by 国分純平
ブライアン・ウィルソンは目を細め、サンダーキャットは体のどこかがムズムズするだろう。もし、彼らがこのLA出身の26歳、ルイス・コールによるセカンド・アルバム『Album 2』を聞いたら、の話だ。少なくとも、ふたりのファンである僕は、すっかり魅了されてしまった。これは、ブライアンのポップスを手がかりに過去を見渡す試みであり、サンダーキャットのソロ・アルバムの"ドラマー版"のような作品である。
(中略)
"ミュージシャンズ・ミュージシャン"といった表現が近いのかもしれない。彼は卓越したテクニックを持つドラマーであり、客演やセッションでさまざまな音楽家と共演している。本作収録「Like a Match」の作者であるジャック・コンテによるポップ・デュオ、パンプルムースを始め、サイケ・ロック・バンドのスペースエイジ、ブラス・バンドのレイヴンズ・デイ・パレードなど、ジャンルを問わず、彼のドラムを必要とするミュージシャンは多い。オースティン・ペラルタもそのひとりだ。ペラルタは、15歳でデビュー、20歳でフライング・ロータスのブレインフィーダーと契約した若き天才ピアニストである。惜しくも昨年急逝してしまったが、ペラルタとコールはLAのライヴハウスでセッションを行っていたという。そして、そこでベースを弾いていたのが、やはりロータス周辺で活躍するサンダーキャットだった。
サンダーキャットも、超絶技巧の持ち主で、セッションに引く手あまたな"ミュージシャンズ・ミュージシャン"である。ただ、彼が2011年にリリースしたソロ・デビュー作『The Golden Age Of Apocalypse』は、優れたプレイが聞けるベース奏者のアルバムではあったが、技巧の披露よりも作曲性や耳当たりの心地好さを優先させており、それは先鋭的なビートをラウンジ・ミュージック的な柔らかい音響で包みこんだフライング・ロータスの2012年作『Until The Quiet Comes』にも当てはまる。彼らが試みたのは、フュージョンやスピリチュアル・ジャズといったメロディアスで優雅な音楽を参照し、LAが育んできたブラック・ミュージックの豊饒さを示すこと。そう言えそうだが、本作のポイントもまさにそこにある。「You Will See」を始めとしたタイトなドラムはもちろん聴きどころのひとつではあるが、重点は明らかにシックなムード作りに置かれている。ただし、彼らが参照したものに加え、ブライアン・ウィルソンやバーバンク・サウンドなど、西海岸のもうひとつのエレガントな音楽を持ち出し、すり合わせているのが、コールのおもしろいところだ。「Grains of Sand」や「Your Moon」の美しいオーケストレーションを聞いて、ロータス周辺で活動するビルド・アン・アークやミゲル・アトウッド・ファーガソンといった、ソフト・ロックとも親和性の高い現代のスピリチュアル・ジャズ・マンたちを思い浮かべるのは容易だろう。
また、本作をさらにユニークなものにしているのが、エレガントな鳴りに反するようなローファイな音質処理だ。トレードマークのドラムはひび割れ、美しいファルセットはラジオやレコード・プレーヤーから流れてくるような色褪せた響きを纏っている。ヴィンテージな質感にこだわる昨今の西海岸ローファイ・ポップの面々を意識しているのかもしれない。ブライアン~ビーチ・ボーイズからの影響が明らかなメロディと併せて考えれば、おそらくそうだろう。しかし、コールの場合、ビーチ・ボーイズにとどまらず、ブライアン本人が愛した40~50年代のポップスやオールド・ジャズ、いやもっと辿ってクラシックにまで行きついてしまうようである。そう感じるのは、シックにあつらえたムードのせいだ。ノスタルジーとはかすんでいるが、甘い記憶のことである。コールはそのあたりのバランスをよくわかっている。
そう書いたところで、コールによく似たロマンチストの名前が浮かんできた。ハイ・ラマズのショーン・オヘイガンだ。エレクトロニクスやオーケストレーションを用いて、ひたすら夢うつつな世界を描くブライアン・ウィルソン・チルドレンのひとり。彼が本作を聞いたら、きっとコールと話をしたくなるに違いない。
――国分純平/キープ・クール・フール
◆TRACK LISTING
01. Leaving The Planet
02. Below The Valleys
03. Grains Of Sand
04. It's So Easy
05. You'll Believe Me
06. Like A Match
07. Your Moon
08. You Will See
09. Clouds
10. Your Moon (Old Version)
11. V
※M10-11: Previously unreleased tracks/ bonus tracks for Japanese edition
All lyrics and compositions by Louis Cole
Except “Like A Match” by Jack Conte
Vocals, Drums, Keyboards, Guitar, Violin, Cello and Tambourine played by Louis Cole
Trumpet and Trombone on "You Will See" by Steve Cole
Additional Strings on "Leaving The Planet" and "You Will See" by Linda Cole
Recorded, Mixed, Mastered and Produced by Louis Cole